心臓神経を介する交感神経作用として心拍数の増加と収縮力の増加が知られ、1958年にMizeresは犬の交感神経刺激実験により、右側のT1-T4刺激は心拍数増加、左側の同レベル刺激は心筋の収縮力の増加を起こすとし、この左右差の見解が一般に認められているが、昨年度の続き、さらに頭数を増やし、犬10頭について、同様な電気刺激実験を行い、右側系の心臓神経を介して心筋を収縮させ、血圧上昇をもたらすかという問題について検討した。血圧の上昇がみられたのは、交感神経節レベルで、T8(第8胸交感神経節)は0/10頭、T7は0/5頭、T6は4/10頭、T5は6/10頭、T4、T3RC(第3胸交感神経節へ至る白交通枝)、T2RCは10/10頭、T1RCで9/10頭、星状神経節で6/6頭、前幹が5/6頭、後幹が6/6頭であった。以上から、右側交感神経系も左側同様、心臓神経を介し、心臓の収縮力を増加させ血圧上昇を起こすこと、その起始は第1-第6胸髄の範囲の上部胸髄であることが判明した。 神経縫合に関する組織学的検討では、H.E.染色および鍍銀染色(Holmes-LFB)において、犬およびラットともに、縫合神経の全部位における神経線維の存在と、縫合部における神経線維の紡錘状膨化および無秩序な走向とが観察されたことから、神経線維の再生が考えられた。更に、縫合部での神経線維の無秩序な走向と神経線維密度の変化は副交感神経切断・再縫合の方が副交感神経-交感神経縫合よりも少なく、縫合部での神経線維の紡錘状膨化も副交感神経切断・再縫合の方が軽度であった。今後さらなる検討が必要である。
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