研究概要 |
胸部内臓(心臓)を制御する自律神経の神経系と神経・内分泌系の2重制御機構の存在について、犬26頭を材料として用い、左心室の収縮による血圧の上昇を指標として検討を行った。 麻酔下に開胸し、交感神経を剖出し、その遠位端の刺激実験を行った。判定は大腿動脈留置カテーテルによる血圧の上昇、もしくは左心室圧の上昇で行った。実験終了後全例固定し肉眼解剖学的に交通枝と交感神経幹神経節との剖出したのち、交通枝の関係から脊髄レベルを同定した。刺激部位は交通枝または交感神経節で、交感神経幹刺激の場合は脊髄レベルの判断は困難を伴うため、その交感神経節の高さを解剖学的に同定し、以下の結果を得た。 1)血圧の上昇を観察された胸交感神経節(以下SG)のレベルはT5SGが5/10頭、T4SGが8/10頭、T3SGが10/10頭、T2SGが10/10頭、T1SGが4/10頭であった。また、頚胸神経節では5/5頭、頚神経ワナの前幹では9/10頭、後幹では10/10頭に反応が見られた。なお、上記の中で交通枝(以下RC)刺激で血圧上昇が認められたのはT4RC(第4胸髄からの交通枝が4/10頭、C8RCが0/7頭、C7RCが0/5頭であった。以上より、犬の心臓神経を介して血圧の上昇を起こす交感神経の起始髄節は第1-第5胸神経節と交通枝を持つ第1-第5胸髄と考えられた。 2)大内臓神経を介する胸部交感神経節レベルはT5SGが2/10頭,T6SGが2/10頭,T7SGが3/10頭,T8SGが4/12頭,T9SGが6/12頭,T10SGが10/14頭,T11SGが12/16頭,T12SGが11/16頭で、第5-第12胸髄が中枢と考えられた。 結論:血圧上昇を起こす末梢自律神経遠心路は(1)神経系と(2)神経・内分泌系の2経路が存在し、(1)は心臓神経を介し、中枢は上部胸髄、(2)は大内臓神経を介し、中枢は下部胸髄である。
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