1.発生途中の脳における神経幹細胞増殖に大きな働きをもつG蛋白質の研究 胎生期のラットやマウスの脳の中で盛んに細胞分裂が起こっている部位(脳室帯)にはある特殊な百日咳毒素(PTX)感受性G蛋白質(Gi2)が局在している。妊娠14日のマウスの脳室内にPTXを注入してこのG蛋白質を不活性化させて妊娠18日の脳を観察すると、脳が若干小さくて皮質が薄く、神経幹細胞の増殖層が薄く、細胞密度も低かった。妊娠16日にBromodeoxyuridine(BrdU)を母親マウスに注射して分裂中の神経幹細胞を標識して、妊娠18日で胎仔を取り出して脳切片を作成して抗BrdU抗体で免疫染色した。その結果、BrdU免疫陽性細胞数がPTXを注入した脳では有意に減少していた。このことから、PTX感受性G蛋白質(Gi2)が胎生期の神経幹細胞の増殖に重要な働きをもっていうことが明らかになった。 2.神経細胞の増殖を活性化するペプチドに関する予備実験 胎生期の脳における神経幹細胞の増殖を活性化するペプチドを明らかにするため、妊娠14日のマウス胎仔の脳室中にいろいろなペプチドを注入して、妊娠15日にBrdUを母親マウスに注射して増殖中の細胞を標識し、16日に胎仔を取り出して脳を固定して切片作成している。切片を抗BrdU抗体で免疫染色して実験群とコントロール群でのBrdU陽性細胞数の比較を行っており、現在まだ検討中の段階である。
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