研究概要 |
遺伝性多指症/無嗅脳症マウスのホモ型(Pdn/Pdn)は、多指症、合指症、水頭症、両眼隔開離、前額の突出など、ヒトGCP症候群と類似した表現型を持つ。また、責任遺伝子であるGli3は、ヒトGLI3と極めて高いホモロジーを持ち、両遺伝子は染色体の相同領域であるマウス染色体13A2とヒト染色体7p13にマップされることから、Pdn/PdnはGCP症候群の相同疾患マウスと考えてきた。一方、Gli3とSonic hedgehog(Shh)遺伝子は互いに発現を抑制する。Shhは脊索および神経管のfloor plateに発現し、Gli3はfloor plateを囲む領域で発現する。このように、Gli3とShhは相互に発現を抑制しあって脳形態形成に関与していると考えてきた。 無嗅脳症の発症メカニズムをGli3とShhの発現の相互関係から解明することが、本研究の主な目的であるが、その前段階として、PdnマウスにおけるGli3遺伝子の異常を調べてきた。Pdnマウスでは、Intron3にretrotransposonが挿入されており、その結果splicingの異常が起き、異常mRNAが出来ている。そこで、PdnマウスのIntron3およぴretrotransposonの全塩基配列を決定しようと試みたが、複雑かつ長大な配列であり、まだ解読継続中である。 そこで、今年度はGli3とShhのcDNAに適当なプライマーをデザインし、RT-PCRで胎生14日から生後O日までの発現量を調べた。その結果、Gli3は胎生14日で高く、順次日を追って発現量が減少した。また、その発現量には、+/+, Pdn/+, Pdn/Pdnの順に差が認められ、Pdn/Pdnでは、+/+の1/4程度の発現量であった。一方、Shhは胎生期あるいは生後0日でも発現量に大きな変化はなく、また、期待に反して、+/+, Pdn/+, Pdn/Pdnの間に差を認めることができなかった。
|