研究概要 |
本年度は、我々の作成した、Cx45の代わりにマーカーとしてLacZ遺伝子を発現する遺伝子変異マウスのヘテロ接合体をもちいて、Cx45 mRNAおよびタンパク発現細胞の組織内分布を、特に中枢神経系に注目して観察した。中枢神経系の解析のために新たな形態学的手法を開発した。まず、約1mmの脳スライスについてLacZ染色を行い、観察・記録した。これにより、脳スライス内の陽性細胞の分布を3次元的に把握することができる。次にこのスライスをテクノビット樹脂に包埋し、2〜5ミクロンの切片としてニュートラル・レッド染色した標本を作製した。これにより、LacZ陽性細胞の今後の電顕観察に繋がる微細レベルの光顕観察が安定して実現でき、細胞種の同定などが容易となった。 ヘテロ接合体の脳において、内外側視床核、ハベヌラ核、外側膝状体、内側膝状体、皮質第5,6層、および海馬皮質移行領域において、LacZ陽性の神経細胞が特徴的分布パターンを示すのが観察された。LacZ陽性神経細胞には、形態的に少なくとも2種類のタイプが分類でき、それぞれの細胞は各神経核にまたがって連続的に分布していた。また、脳内およびくも膜下腔の特定の血管において、内皮細胞、周細胞、平滑筋細胞に、陽性所見が観察された。Cx45は初期発生における重要性が示唆されている細胞間チャネルタンパクであり、一般的にダウンレギュレートされ特定の組織構造のみに発現が限局する特性をもつことを考えると、このような分布様式は、発生過程の陽性細胞の移動様式に関連する可能性があるとともに、構築された陽性細胞の組織内分布様式には、機能的に重要な情報を含んでいると考えられ、今後、機能的解析と併せた解析が期待される。c-Kit陽性消化管ペースメーカー細胞とCx45発現様式の解析は、抗LacZ抗体による免疫組織化学的観察の条件設定の調整の途上である。
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