本研究は、組織内で炎症・抗原刺激を受けたリンパ系細胞が、どのようなルートをたどってリンパ管へ到達し、どのような認識機構のもとに選択的にリンパ管内へと進入してゆくかを解明することを目的とする。平成12年度は、1、まず組織内での微小血管およびリンパ管の鑑別方法を確立した。(1)全ての微小血管系の位置関係を把握するために、ビオチン化トマトレクチン灌流による血管の描出を行なった。この方法は、組織内での血管系のみを選択的に描出するのに確実で有用であった。(2)また、リンパ管同定のために、マウス由来の良性リンパ管腫を免疫原として、新たにリンパ管に特異的なラットのモノクローナル抗体(LA102:仮称)を作成した。現在、このLA102による免疫染色を行い、抗原の局在を光顕ならびに電子顕微鏡で検索するとともに、抗原の生化学的性状の解析を行なっている。次に、2、炎症反応に伴う細胞動態とリンパ管との三次元的相関を調べるために、異系ラット細胞の移入や、P.Acnesの死菌を炎症刺激として用いて、刺激後のリンパ球やマクロファージ系細胞の動態とリンパ管との位置関係を経時的に調べた。肝臓では、異系ラットの樹状細胞を静脈内投与すると、30分以内に肝類洞のクッパー細胞に一時的に接着後、その後Disse腔に入り、数時間以内に門脈周辺のリンパ管内に遊走することが分かった。この際の細胞間接着には、クッパー細胞から何らかのケモカインが産生され樹状細胞を肝臓へ誘導し、さらにGal-NAc糖鎖とC型レクチン様受容体との特異的な結合反応による接着が重要であることが明らかとなった。しかし、炎症性細胞をリンパ管へと誘導し、さらにその内皮との結合に関与すると思われる分子については今回は発見に至らなかった。来年度は、作成したモノクローナル抗体を用いて、リンパ管特異的な機能分子の解析をさらに進展させたい。
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