本研究は、リンパ管の細胞回収機構の形態的かつ機能的解明を目的として以下の実験を行った。 1.局所の炎症反応に伴うリンパ管の形態と機能の変化の追跡:(1)微小血管群の同定ためにトマトレクチン灌流による描出法を確立した。(2)リンパ管同定のために、新たにリンパ管特異的なモノクローナル抗体(LA102)を作成し、炎症局所でのリンパ管の形態と機能変化を検索した。 2.炎症に伴うリンパ系細胞の動態とリンパ管との三次元的位置関係の解析:(1)臓器移植時の局所に集まるリンパ系細胞の動態を追跡し、炎症性細胞がリンパ系に入る第一段階で糖鎖-レクチン受容体が関与することを発見した。(2)多重蛍光免疫染色により局所微小循環系とリンパ系細胞との三次元的位置関係を解析した。 3.リンパ管内皮およびその周囲組織内に特に強く発現する物質の証明:(1)LA102抗原は、マウスリンパ管内皮に局在し、血管には存在しない分子量約27-30kdのタンパク質で、従来リンパ管に選択的とされているLYVE-1やPodopraninなどの分子とは異なる全く新しい分子であった。(2)組織内の細胞移動に関与すると思われる細胞外基質やケモカインおよびそれらに対するレセプター分子と、LA102抗原分子との形態学的・機能的相関関係を現在比較検討中である。 4.証明された物質の分子機能の実証:驚いたことにLA102抗原はリンパ管のみならず、再循環を行うTリンパ球などの表面にも存在することから、この抗原がリンパ管とリンパ球間の特異的な認識機構に関与する可能性が示唆された。そこでマウスTリンパ球を用いた組織切片上での細胞接着阻害試験によって、LA102抗原分子機能について現在検討中である。 以上の研究成果の一部を第25回日本リンパ学会総会でのワークショップ並びに第89回日本解剖学会関東支部学術集会での特別講演で発表した。
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