研究概要 |
平成13年度の研究においては,自律神経系とリンパ管系の3次元的な構築が外科的に問題になる部位として,膵頭後部リンパ節(No.13)及び総肝動脈幹リンパ節(No.8)から大動脈周囲リンパ節(No.16)へ注ぐリンパ管の経路に着目した。 85体の通常ホルマリン固定人体標本を用いて,No.16と胸管の起始との関係を検討した。大部分の例(90.6%)では,左腎静脈下縁〜下腸間膜動脈根部の大動脈周囲リンパ節(No.16b1)からのみ胸管が起こづていた。残りの例(9.4%)では,腹腔動脈根部〜左腎静脈下縁の大動脈周囲リンパ節(No.16a2)から起こる枝も見られた。また85体の全例でNo.16a2interリンパ節は,腹腔神経叢自身または腹腔神経叢-横隔膜脚間の結合組織から起こる短いリンパ管を受け入れていた。 85体中15体では研究を主たる目的として詳細に剖出し,No.13及びNo.8からNo.16へ注ぐリンパ管の経路を検討した。15体中6体で,途中のリンパ節を介することなく直接にNo.16b1へ注ぐ太いリンパ管の経路(long descending pathway)が見いだされた。 以上の結果から,膵頭十二指腸を外科的に左腹側へ授動する手技(コッヘル授動術)の視野において,腹腔神経叢より浅いこの領域の所属リンパ系の大部分を郭清できる可能性が示唆された。しかし,主流ではないものの腹腔神経叢と横隔膜脚の間を通るリンパ経路は存在しており,その経路の中継点であるNo.16a2の術中生検には大きな意義があると考えられた。これらの経路をwhole-mount組織化学により染色するための手技は,ひきつづきヒト腸間膜等を用いて修練途上である。
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