大脳皮質の特定の神経細胞の周囲に網状構造をつくる星状膠細胞の突起は神経細胞内外のイオン濃度の大きな変動にもかかわらずイオン環境を一定に保持する。膠細胞の網はカルシウム結合性のパルブアルブミンを含有しバースト状に発火するγ-アミノ酪酸性の非錐体細胞に多い。神経組織のプロテオグリカンであるニューロカンとホスファカンはパルブアルブミン含有γ-アミノ酪酸性非錐体細胞を囲む膠細胞にほぼ限局して存在するので、これらのプロテオグリカンを含有する膠細胞が非錐体細胞の高頻度発火を支えるイオン微小環境を調節することになる。免疫組織化学的検索は成体脳では神経プロテオグリカンの主要な存在部位は細胞質である可能性を示し、細胞質のプロテオグリカンに期待される機能は、普通のプロテオグリカン細胞外機能モデルでは説明できない。本研究は細胞内のプロテオグリカンとイオン調節が直ちに結びつくと考えるのではないが、イオン微小環境調節という観点を突破口としてプロテオグリカンが特定の細胞内に限局して存在する意義を解明しようとして、細胞内プロテオグリカンに特徴づけられる膠細胞とそれに囲まれる非錐体細胞にどのようなイオンチャンネルがあるのかを調べた。電位依存型遅延整流型カリウムチャンネル蛋白質の1つが非錐体細胞に存在することから、それを含め多数のチャンネル蛋白質に対する抗体を用いたが、ニューロカンとホスファカンの局在と関連した分布を示す抗体反応は見いだされなかった。
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