研究概要 |
造血微細環境を形成する肝芽細胞の形態と細胞間連結の変化を,超微形態レベルと免疫組織化学的に観察した.肝芽細胞は胎生11-13日すなわち肝臓造血のStage IとIIにおいて,約870μm3のほぼ一定の細胞体積を有する.肝芽細胞は多角形状で,隣接する細胞連結面にはE-カドヘリンを接着タンパクとする接着性結合のみが認められる.胎生12-13日で連結面にはデスモゾームが出現する.胎生13日以降肝細胞体積値は急速に増加し,Stage IIIの15日で1280μm3,19日には2796μm3となり,胎生13-19日の間に体積値で約3.2倍に増加する.StageIIIの胎生14日で肝芽細胞はその形態が立方状に変化し,細胞側面では毛細胆管の周囲に密着結合と細隙結合が形成され始め,成熟マウス肝細胞の接着性連結,デスモゾーム,密着性結合と細隙結合の4種の連結装置がすべて出現するようになる.Stage IVすなわち胎生15日以降の肝臓では,隣接する肝細胞は広い細胞側面で連結し,肝細胞板の形態を呈するようになる. 肝芽細胞の変化と平行して,肝臓内の造血細胞系の種類は著しく変化する.肝臓造血の退縮期に赤芽球や果粒球に混じって出現するリンパ球について,赤芽球との鑑別,サブグループの確定を目的として,細胞表面のCDマーカーの免疫染色を試みた.使用抗体は抗CD3 ε,抗CD19,抗CD34,抗CD41,抗CD45RA,抗CD45RC,抗CD49d,抗CD90(Thy-1)である.陽性コントロールで,成熟マウス脾臓白脾髄を染色すると,T細胞とB細胞とを明確に区別可能であった.胎生後期並びに出生直後の肝臓で免疫染色を行ったが,いずれの抗体に対しても,好中球のごく一部とマクロファージ様細胞の一部が陽性であった以外,リンパ球を始めとして,各系に特異的な陽性反応は認められなかった.抗マウスモノクロナール抗体によるCDマーカー検索は,骨髄系もリンパ系いずれもマウス胎生期造血細胞の検出には問題があり,胎児への応用は今後の課題といわざるを得ない.
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