ホワイトレグホン胚に高エネルギーX線を照射して、あるいはマウス胚に^<252>Cfあるいは3 MeVの中性子線を照射して、形態形成に与える影響を調べた。また、神経堤細胞に与える影響を調べるためにNT-3遺伝子の発現について調べた。また、発生における左右差に関連すると考えられているPitX2遺伝子の発現にあたえる影響を調べた。 その結果、中性子線照射により、左右軸の発生障害が認められた。高エネルギーX線により、NT-3遺伝子の発現が極端に障害される例があることが判明した。Pitx2遺伝子の発現も影響を受ける場合があることがわかった。また、異常PitX2遺伝子の発現を強く示唆する例が認められた。他の遺伝子群については、胚によっては発現が低下していたが、低下していない胚もあり、全体的な傾向としては発現に大きな変化はなかった。また、結論として、放射線照射によりNT-3など特にその発現に障害を受ける遺伝子がある可能性が示唆されると同時に、発生に関する特定の遺伝子特にホメオボックス遺伝子の変異は生じないことがわかった。 その他、放射線に対する細胞防御に関連する遺伝子の発現について検討した。つまり、ニワトリ胚に高エネルギーX線を照射して、p53、ATMおよびRAD51の発現に与える影響を検討した。5Gyあるいは8Gyを照射後24時間のp53およびATM遺伝子の発現は対照群に比較して有意に低下していた。p53およびATMは放射線照射によるG1期停止や細胞死に関連する重要な遺伝子であり、放射線照射が細胞の防御機構に影響を与えた可能性が示唆され、異常発生のメカニズムを解明する上で興味深い。また、RAD51遺伝子は放射線照射により最大2倍程度発現の上昇が認められた。これは、今までの報告と異なる結果であり、放射線に照射により、DNA修復遺伝子の発現が増加する可能性がわかった。
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