(1)これまでの研究によりMDCK細胞に強制発現させたクローン化ラット上皮性Na^+チャネル(αβγ-rENaC)は非水解性ヌクレオチド結合を介し細胞内ATPによりそのチャネル活性が調節される事が示されているだけでなく、ATPがαサブユニットに結合することが分かってきた。このαサブユニットの細胞内ドメインであるN端(GLGKGD)およびC端(GRGARG)に存在するグリシンに富む部位がATP結合に重要な役割を果たしている可能性が高いので、まずこれらN端およびC端に存在するグリシンをアラニンに変異させたαサブユニットをコードするcDNAを作製し、MDCK細胞に遺伝子挿入法を用いて変異体蛋白を安定型強制発現細胞の作製を試みた。これらの変異体蛋白発現はC端にHAタグを付加することによりモノクローナルHA抗体を用いウエスタンブロット法により検出した。N端およびC端グリシン変異体αサブユニットをATP結合実験に使用可能なレベルの蛋白を安定型強制発現するそれぞれ5および11クローン化細胞を作製することに成功した。今後このクローン化細胞を用いてATP結合実験を行う。 (2)αβγ-rENaCがクローニングされたラット大腸粘膜上皮の表層細胞はαβγ-rENaC蛋白およびCFTR蛋白を発現することが知られており、ENaCとCFTRの機能連関を調べるのに重要な実験系となりうる可能性がある。そこでUssing chamber法を用いてラット大腸肛門近傍粘膜でアミロライド感受性ENaC活性が最も高いことを明らかにした後、その領域から作製した単一陰か標本の表層細胞にホールセルパッチクランプ法を適用しアミロライド感受性電流の性質を調べた。アミロライド感受性はUssing chamber法で得られたものと同じであり、アミロライド感受性の電位依存性およびアミロライド感受性電流のイオン選択性はαβγ-rENaCの性質と同じであった。またラット大腸肛門近傍粘膜はcAMP依存性Cl-輸送機構を持つ事がわかっているので、表層細胞に機能的CFTR活性があるか否かについて調べる予定である。今後、上記heterologous発現系による細胞内ATP結合ドメインを介するENaC機能調節機構および大腸表層細胞実験系を用いてのCFTRによるENaC機能調節機構を総合的に解明していきたいと考えている。
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