研究概要 |
本研究は、心筋組織中に比較的多量に含まれるミオグロビンが、従来考えられてきた(1)短時間の酸素貯蔵、(2)細胞内酸素拡散を増強する促進拡散担体、という機能に加えて、(3)心筋組織中で発生した活性酸素種(ROS)の消去作用をもつ、という仮説を検討しようというものである。この目的のため、今年度は、単離心筋細胞を用い、細胞内の活性酸素の量を蛍光法で定量し、つづいて内因性に活性酸素を生成することが可能かどうかを検討した。 単離心筋細胞を細胞膜透過型の活性酸素(おもにH_2O_2)指示蛍光試薬であるH_2DCF/DA(5μM)またはcarboxyH_2DCF/DA(10μM)と35℃で30分間インキュベートをした後、細胞をHEPESバッファにて洗浄、実験に供した。細胞外に50ないし100μMのH_2O_2を加えると、DCF蛍光強度はベースラインの約5倍に増加し、本法で細胞内のROSレベルを推定できることがわかった。 次に、単離心筋細胞を気密キュベットにいれ、細胞外を10%酸素で表面灌流した後、細胞外酸素濃度を1%に低下させ30分間灌流を行ったところ、DCF蛍光は低酸素灌流と共に低下した。この結果は、培養心筋細胞に低酸素負荷を与えるとDCF蛍光が大きく増加するとしたSchumackerらの報告(JAP88:1880-1889,2000)と異なるものである。 外因性H_2O_2に対するDCF蛍光の増加は、5mM NaNO_2を用い予めミオグロビンを不活化した細胞において、増加傾向を示した。これは、本研究の仮説を支持する結果である。 最近、本研究と同様の目的を持った研究の成果が出版された(PNAS98:735-740,2001)ため、本研究をより迅速に遂行する必要がある。
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