研究概要 |
本基盤研究は平成12,13年の2年間にわたるものであるが、本年度は分子生物学的手法と電気生理学的手法を組み合わせて痛み受容体の構造・機能協関の解明に迫る以下のようなアプローチで、痛み受容機構の分子メカニズムを解析した。 1)点変異体を用いた酸感受部位の同定酸(プロトン)によるVR1の活性化のEC_<50>が約pH5.4であること、プロトンが細胞外からのみ作用することから、VR1の細胞外ドメインの酸性アミノ酸を中性あるいは塩基性アミノ酸に変える点変異体を作成してパッチクランプ法を適用して機能解析を行った。その結果、第3細胞外ドメインの600番目のグルタミン酸がプロトンによるカプサイシン活性化電流及び熱活性化電流の制御に、648番目のグルタミン酸がプロトンによるVR1の直接の活性化に関与する重要な部位であることが明らかとなった。2)VR1制御機構の検討後根神経節細胞では、カプサイシン活性化電流がA-kinase系を介してprostaglandin E_2によって増強されること、熱活性化電流がC-kinase系を介してbradykininによって増強されることが知られている。そこで、培養細胞を用いた異所的発現系でVR1活性の炎症関連メデイエイターによる制御機構を検討した。その結果、炎症等において細胞外に放出されるATPが代謝型のP2Y1受容体を介してPKCを活性化させることによってVR1活性を増大させることが明らかとなった。これは全く新しい疼痛発生の機序として注目される。
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