研究概要 |
P型ATPascに属する(Na, K)ATPase,(H, K)ATPaseは触媒サブユニットであるα以外にβサブユニットを要求するが,筋小胞体Ca-ATPaseは,これらとほとんど同じ膜への配向を示しながらも触媒サブユニットのみで正しい配向で膜に組み込まれ機能する。昨年度までの研究から 1)Ca-ATPascも生合成の極く初期には,(Na, K)ATPaseのβサブユニットと相互作用する。 2)Ca-ATPase-(Na, K)ATPaseβサブユニット複合体は一過性であり数時間で解離する。 3)(H, K)ATPaseβサブユニットも(Na, K)ATPaseβサブユニットと同様に生合成の初期においてCa-ATPaseと相互作用する。 ということが示され,こちらからCa-ATPaseでも立体構造形成過程にβサブユニット様の補助因子が介在する可能性が予想された。そこで今年度はこのような補助因子が実際に存在するか検討を行った。Xenopus卵母細胞より調製した膜画分,可溶性画分SDS-PAGE,膜転写し抗(Na, K)ATpaseβサブユニット抗体,抗(H, K)ATpaseβサブユニットモノクローナル抗体免疫染色すると両者に共通して反応する約60kDaのバンドが検出された。このバンドは(Na, K)ATpaseβサブユニットモノクローナル抗体では検出されなかった。あらかじめCa-ATPasecRNAを注射しておいた卵母細胞にこれら3種の抗体を注射したところ抗(Na, K)ATpaseβサブユニット抗体,抗(H, K)ATpaseβサブユニットモノクローナル抗体ではCa-ATPaseの生合成の阻害が見られたが,60kDa蛋白と反応しない(Na, K)ATpaseβサブユニットモノクローナル抗体では阻害は見られなかった。これらの結果はこの60kDa蛋白がXenopus卵母細胞発現系におけるCa-ATPaseの生合成に関与している可能性を示唆している。そこでこの60kDa蛋白を同定すべく現在精製を進めている。
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