研究概要 |
摘出した腸間膜細動脈壁の血管径をビデオエッジディテクタにより計測した.外液のCa^<2+>を除くと細動脈は拡張することから,この標本はある程度の緊張を保っていると考えられた.また伝播しない小さな収縮が繰り返し起こり,それが直径の不規則な揺らぎとして観察された.時として大きな標本全体に伝播する収縮も観られた.この緊張はテトロドトキシンにより神経を遮断したり,外膜をはぎ取って神経を除去しても消失しないことから,神経性ではないことがわかった.また,エンドセリンA受容体遮断薬FR13937は無効であった.前年度の研究結果から,この組織では内皮細胞同士は豊富なギャップ結合で電気的につながっており,平滑筋同士や平滑筋と内皮細胞間にもギャップ結合が存在することが示されたので,定常状態では平滑筋細胞と内皮細胞は等電位であると考えられる.そこで内皮細胞層が外側になるような叛転標本を作り,パッチ電極による内皮細胞膜電位測定を血管径の計測と同時に行った.その結果,時々生じる大きな血管収縮はスパイク放電を伴っていたが,頻回に起きる血管径の小さな揺らぎは細胞膜電位の変化を伴っていなかった.18β-Glycyrrhetinic acidを投与してギャップ結合を遮断すると,血管壁緊張は減少した.また,18β-glycyrrhetinic acid存在下でも高K^+液によりコントロール状態と変わらない収縮が起きたことから,この物質が筋収縮そのものを抑制しているのでないことが示された.一方,外膜除去標本で測定した平滑筋細胞膜電位は18β-glycyrrhetinic acidにより過分極を示したことから,内皮細胞は平滑筋-内皮細胞間ギャップ結合を介して平滑筋の膜電位を脱分極側に引っ張ることにより,細動脈緊張を維持していると考えられる.
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