研究概要 |
哺乳類リアノジン受容体(RyR)には3つの異性体(RyR1,2,3)があり、細胞内Ca^<2+>濃度調節と情報伝達に重要な役割を果している。ウサギ骨格筋のRyR1及びRyR3を用い、チャネル活性に対する酸化剤、還元剤の効果を検討してきた。これらのisoformsは共に酸化剤である活性酸素に対し強く応答し、還元剤で抑制された。本年度は以下の点を中心に検討した。 RyR1はウサギ骨格筋HSRから抽出、精製した。このチャネルの細胞質側と筋小胞体内腔側の酸化還元電位をそれぞれ生理状態に近い電位に保持した時、チャネル活性がどのような振る舞いを示すかを検討した。その結果、筋小胞体内腔側の酸化還元電位を-220mVから-180mVの間に設定しても、チャネル活性は影響されなかった。しかし、細胞質側の酸化還元電位を-231mVから-180mVの範囲に設定すると、電位依存性にチャネル活性が賦活された。報告によれば、筋小胞体内腔側の酸化還元電位は変化せず、GSH/GSSG比から計算し、ほぼ-180mVと見積もられている。一方、静止筋の細胞内酸化還元電位は-220mVから-230mVと還元状態にあるが、運動や虚血などにより大きく酸化状態へと変化する。従って、本結果は酸化によりRyR1チャネルが開口し、細胞質Ca^<2+>濃度を上昇させると考えられ、これは細胞質側に酸化還元電位または酸化還元を感受するセンサーの存在を示唆している。次にATPの効果について検討した。筋小胞体内腔側の酸化還元電位を-180mVに、細胞質側を-220mVに固定した時、ATPはチャネル活性を賦活したが、細胞質電位を-230mVへと還元状態に変化させると、ATPに対する反応性が低下した。細胞質の酸化還元電位によりチャネルがmodulatorsに対する応答性を変えることは興味がある。今後、RyR3チャネルで同様の結果が得られるか否かを検討する。
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