研究概要 |
興奮-収縮連関は筋細包膜に発生した脱分極が細胞内に伝えられ、筋収縮を誘発する過程である。このシグナル伝達過程は筋小胞体(SR)と横行小管(T管)が接する三組み構造と呼ばれる場所で蛋白質(SRのリアノジン受容体:RyR1)-蛋白質(T管の電位センサー)相互作用を介して行われるが、その制御機構は未だ解っていない。ウサギ滑格筋から精製したRyR1チャネルがCa^<2+>による活性化に少なくとも2種類の異なった開確率(Po)を示すことを見つけた(J.Biol.Chem.,274:17297)。high-Poおよびlow-Poチャネルと名付けた。この違った特徴を示すチャネルは何に起因するか、酸化・還元剤やチャネル賦活剤にどのように反応するかを解明しようとした。チャネル電流の大きさや開時間などの基本的な性質に差はなかった。還元剤(DTT)の投与でhigh-Poチャネルはlow-Poチャネルへと性質を変化させ、カフェインやATPなどのチャネル賦活剤に対する応答性が低下した。low-Poチャネルへの酸化剤(pCMPs)の投与はチャネル活性を増強し、high-Poチャネルと似た性質を示した。筋細胞は静止時大きな酸化・還元電位(-220〜-230mV)を持ち、運動で電位は減少する。low-Poチャネルの細胞質側の酸化・還元電位を-220mVから-180mVへのシフトで、チャネル活性が増強され、-230mVへの還元でほとんど閉状態に変化した。一方、high-Poチャネルの還元はチャネル活性を低下させた。興味あることにlow-Poチャネル、還元によりPoの低下したチャネルはカフェイン、ATP、活性酸素など賦活剤に応答しにくくなった。以上の研究結果はチャネルの酸化・還元状態がチャネル活性のみならず、反応性を制御していることを示唆している。
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