研究概要 |
膜電位依存性プロトン(H^+)チャネルの活性および発現調節機構をラットミクログリアおよびマウス破骨細胞で調べた。BCECFをミクログリアに負荷し,酸性のNa-lactate(pH6.8)に暴露すると細胞内pHの低下が起こった。このとき,pH非依存性の励起波長を用いて色素の希釈を確認し,細胞膨化が起こる事を証明した。希釈率が細胞直径の変化とよく相関したため,ホールセルクランプの実験では細胞直径を膨化の指標とした。細胞外pHを7.3に維持した状態でも,ピペット内液のpHの低下(pH5.5〜7.3)に伴い細胞直径は増大し同時にH^+電流が増強した。この増強は活性化電位の過分極側へのシフトおよび活性化速度の促進によるものであった。細胞膨化とH^+電流の増強は非水解性ATP結合を必要とし,アクチン作用薬(phalloidin,cytochalacin D)で抑えられた。これらの結果はH^+チャネルがH^+を強力に排出することによってアシドーシスによるcytotoxic swellingからミクログリアを保護するように働くことを示唆した。H^+電流はしばしばoscillationし,細胞内外の微小環境の変化に応じて刻々と変動する事が推測された。以上は論文で発表した(J.Neurosci.,2000:Neurosci.Res.2000)。一方,破骨細胞でのH^+チャネルの発現は培養条件,分化度で大きく異なった。骨髄細胞を骨芽細胞系cell line(ST2)と共培養して分化させた場合にはH^+チャネル活性が殆ど検出されなかったが,RANK Ligandを添加して分化させた場合にはH^+チャネル電流が記録された。しかし,電流活性は核数の増加につれて減少し,チャネル発現に影響する因子を現在検討中である。これらの成果の一部は第78回日本生理学会大会(2001年3月)で発表予定である。
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