研究概要 |
膜電位依存性プロトン(H^+)チャネルの活性および発現制御機構をラットミクログリアおよびマウス破骨細胞で調べた。ミクログリアでは,細胞内pHの低下と共に細胞膨化が起こり、H^+電流が増加した。このH^+電流増強は活性化電位の過分極シフトと活性化速度促進によるものであった。細胞膨化とH^+電流の増強は共に非水解性ATP結合を必要とし,アクチン作用薬で抑えられた。H^+チャネルはH^+を強力に排出し、アシドーシスによるcytotoxic swellingからミクログリアを保護するように働くことが示唆された。また10-30分の周期でH^+電流振動が見られ,チャネル活性が細胞内外の微小環境の変化に即応して調節される事が推測された。また破骨細胞では、sRANKリガンド存在下で単核から多核の成熟細胞に分化する過程でH^+チャネル活性が変化した。1〜5核の細胞では全例でH^+電流が検出されたが、6核以上では電流の小さい細胞が増加し、平均電流密度は5核以内の細胞に比べ有意に小さかった。骨芽細胞系cell line(ST2)の存在下で破骨細胞を分化させると5核以下でもH^+電流は殆ど検出できないことからH^+チャネルの発現あるいは活性化チャネル数が分化過程や培養条件の影響を受けることが示唆された。6核以上ではH^+チャネルとの機能連関が注目されるNADPH oxidaseによる活性酸素産生が低い細胞が多かった。この結果は破骨細胞の分化過程でNADPH oxidase活性とH^+チャネル活性の低下の間に何らかの関連があることを示唆する。今後、転写因子を含む発現調節因子が細胞機能の変化に応じてどのようにH^+チャネル発現を制御しているかを検討していきたい。
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