近年、除細動器の体内装着も行われ臨床的に脚光を浴びている。これに関して電気的除細動は副作用として膜穿孔を発生する、あるいは除細動のメカニズム自体に膜穿孔が関係するなどの報告があり、心筋における膜穿孔の基礎的研究は臨床に関連する意義がある。本研究の主な成果は、膜穿孔を膜不透過性で核酸などと結合する蛍光マーカーethidium bromide(EB、MW394)の細胞内取り込みによって同定したことである。膜を過分極させると内向き電流(I_<hi>)が発生する。細胞内EB蛍光はI_<hi>の発生によって増大し、過分極中の増大はI_<hi>の時間積分とよく一致した。EBがI_<hi>の一部として流入し細胞内に蓄積することは、I_<hi>が穿孔によって発生することの証拠となった。膜穿孔は過分極によって増大し、-140、-160、-180mVでは著しい収縮を伴った。一方、リゾホスファチジルコリンは膜穿孔の発生を濃度・時間・電位依存性に促進した。また、膜穿孔が発生した場合は、膜損傷部からのethidium^+やCa^<2+>の流入は負の膜電位で促進された。膜穿孔発生時にはI_<KATP>は細胞傷害的であり、これに対しグリベンクラミドが脱分極を持続させて上記カチオンの流入を減少した。このように正常では膜穿孔は少ないが、大電場や膜傷害性物質の負荷は膜穿孔を容易に発生させ、細胞に障害を与える。また、穿孔による傷害部からの陽イオン流入は脱分極で減少するのでI_<KATP>チャネルの阻害が細胞保護的に働くことが判明した。
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