ホヤ胚神経初期発生マーカーである内向き整流性K^+チャネル(TuIRK)遺伝子ゲノムのクローニングを行い、5'-非翻訳領域にある4.8kbのTuIRKAプロモーター領域および2.5kbの3'-非翻訳領域を含む約17kbの全配列を決定した。GFP遺伝子を連結したTuIRKAプロモータープラスミドをホヤ8細胞胚から作成した2細胞系に注入すると、表皮分化型aaおよびbb2細胞系で強いGFP蛍光が確認され、神経分化型のaA2細胞系のa4.2細胞では蛍光の発現がより少なくかつ遅れていた。従って、得られたプロモーター領域は分化特異性の差次的活性を示した。TuIRKAゲノムの約10Kbpにおよぶコーディング領域は、少なくとも12個のイントロンにより分断され、スプライス部位のコンセンサス配列は脊椎動物と良く対応していた。ホヤIRKチャネルと蛋白として相同性のある他種IRKのゲノム構造の検索を行うと、アミノ酸配列で相同性の高いヒト、ショウジョウバエよりも、C.elegansIRKチャネルのゲノム構造の方がホヤと高い相同性を認めた。また、神経分化の可視化解析のための新標本として、ホヤ4細胞胚の前方4分円A3細胞と8細胞胚のa4.2あるいはA4.1細胞ペアーよりなる細胞トリプレットを作成、細胞分裂抑制後、培養した。A3-aaトリプレットでは3細胞が揃って神経細胞になるか、表皮細胞に分化した。神経化したA3細胞にみられるスパイク電位は、KA電流をともない振幅が小さく、尾側神経細胞型であったが、a4.2細胞の場合はスパイク電位の振幅が大きく、頭側神経細胞型であった。神経化したA3-AAトリプレットのA3は、多くの場合、頭側神経細胞型に分化した。さらに、単離したA3をサブチリシンで神経化すると殆どが頭側神経細胞型になり、bFGFを含む海水中で培養すると尾側神経細胞型への分化が著明に促進された。
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