研究概要 |
2年にわたる本助成研究「心筋Ca誘発性Ca遊離機構のリアノジン受容体側からの電気生理学的評価」の計画書にしたがって実験を進めた結果、以下の成果を得た。 (1)リアノジン受容体を標的とするもうひとつの生理学的修飾物質として、燐酸化酵素Aを選んだ。同燐酸化酵素により、リアノジン受容体チャネルは活性化される。また、その活性化は、細胞内Mgリガンドの感受性の低下によることが判明した。この仕事は、Pflugers Archiv(In press)に受理された(小冊子参照)(2)リアノジン受容体を標的とする病態生理学的修飾物質として、スフィンゴリン脂質を選んだ。同物質によるリアノジン受容体チャネル活性の修飾機序を検討する。この仕事は論文にまとめ、plugers Archiv(In preparatin,小冊子参照)に既に投稿した。(3)リン脂質2重膜内のリアノジン受容体細胞質側へ、ピエゾ濃度固定法を用い、Caをパフ状に瞬間投与し、同チャネルに活性化電流を生じさせた。(4)リアノジン受容体のチャネル電流には、特徴的な不活性過程が見られる。この過程に注目し、そのCa依存性や電位依存性を調べながら、Ca誘発性Ca遊離機構における不活性過程の果たす役割を検討した。なお、(3)と(4)については、現在、論文にまとめているところである。 これらの実験により、心筋収縮の仕組みを支える興奮収縮機構の要であるCa誘発性Ca遊離の調節に関して、幾つかの新しい生理学的、病態生理学的機序が明らかにされたものと考える。
|