細胞膨張におけるアミノ酸放出機構の解明にあたり、特にグルタミン酸に着目して、細胞膨張に伴う細胞からのグルタミン酸放出を効率よく検出できる測定システムの確立を行った。その測定システムとは、グルタミン酸にNADH存在下でグルタミン酸脱水素酵素を作用させ、発生したNADを発色基質WST-8を用いて検出を行うものである。この測定システムを用いて、グリオーマ細胞株C6からの低浸透圧性グルタミン酸放出を測定した。低浸透圧刺激をC6に与えると、細胞外グルタミン酸は刺激前の数μMから10μM以上にまで増大する。このグルタミン酸濃度は、細胞膜近傍においては数mMになると見積もれる。このグルタミン酸放出は、温度変化に対して影響をうけず、グルタミン酸トランスポータに対する阻害剤やClチャネル阻害剤を加えても抑制されなかった。また、低浸透圧性ATP放出を抑制するGdを加えてもグルタミン酸放出は抑制されなかった。これらの結果は、C6に低浸透圧刺激を与えた場合、グルタミン酸トランスポータ、Clチャネル、ATP放出経路とは異なった経路によりグルタミン酸が細胞外に放出されることを示唆するものである。また、虚血性細胞膨張のモデルとして、代謝阻害剤のNaN3をC6に投与することにより細胞を低酸素状態とした。NaN3を投与することにより、低浸透圧刺激の場合と同じように細胞外グルタミン酸は刺激前の数μMから10μM以上にまで増大した。このグルタミン酸放出もグルタミン酸トランスポータに対する阻害剤、Clチャネル阻害剤、ATP放出阻害剤投与により抑制されなかった。これらの結果から、虚血性細胞膨張時にも低浸透圧性細胞膨張の場合と同じ経路を介して、グルタミン酸が細胞外に放出されるものと考えられた。これらの成果は、平成13年日本細胞生物学会および平成14年日本生理学会にて発表された。
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