形質膜越えのCa^<2+>流入は、細胞内Caイオン濃度の主要な調節機構の一つであると同時に、膜電位の脱分極を担うという生理的意義を有する。最近、Ca^<2+>流入経路として、受容体介在型陽イオンチャネル(Receptor-mediated cation channel)(RMCC)群が注目を集めている。TRPホモログ(TRP1-7)を見い出し、これらのTRPの組み換え発現により得た、単一分子種よりなる受容体活性化Ca^<2+>チャネル(RACC)の機能的解析を行い、"native"RACCの実体を探った。7種類の受容体活性化TRPチャネルホモログ(TRP1-7)のなかでもTRP6は、他のTRPホモログを圧倒して門脈平滑筋細胞に形質膜に高発現しており、平滑筋の交感神経性調節を担う、α1アゴニストにより惹起されるカチオンチャネルを形成していることが明らかになった。Ca^<2+>シグナルの時空間パターンの決定には、形質膜-小胞体間の機能的相互作用が重要である。その解明を目的に、モデル系として相同組み換えが容易であるトリB細胞DT40を用いてTRP1欠損株を作製した。TRP1欠損はB細胞受容体刺激ににより惹起されるストア依存性Ca^<2+>流入だけでなく、小胞体からのIP3受容体を介したCa^<2+>放出、及びCa^<2+>振動を損なった。このことからTRP1はCa^<2+>シグナルの調節において枢要の地位を占めていることが明らかになった。classicalなTRPホモログに加え、数10microMのH_2O_2等、活性酸素種によって活性化開口する新規Ca透過型カチオンチャネルLTRPC2を同定した。本LTRPC2チャネルの直接の活性化トリガーは、ニコチンアミド酸化体と考えられる。また、活性酸素種により惹起される細胞死をLTRPC2が仲介することが示唆された。活性酸素種はTRP関連チャネルの正常な活性維持にも深く関与しており、細胞レドックス状態を感受してCa^<2+>シグナルに変換するTRPの生理学的意義が示唆された。
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