生体内環境を一定に保つ機構の一つに体温調節機構がある。ヒトを含めた哺乳類は体温を熱産生・皮膚血管運動・ふるえ・発汗などの自立性機能の変化と行動の変化という操作により調節しているのがよく知られている。環境温や体内の温度の変化に対する自立性および行動に見られる反応は視床下部の体温調節中枢が司ることもよく知られている。本研究計画は、視床下部体温調節中枢が体湿調節に密接に関わる皮膚血管運動をどのように調節するのかを、末梢の血管収縮線維の活動を調節する延髄に存在すると考えられるブレモーターニューロンを同定し明らかにすることにある。本年度は最終年度であるためこれまでの成果をまとめ現在論文準備中である。その要旨は、皮膚交感神経血管収縮線維の自発活動に認められる周期的活動について、麻酔ウサギを用いて解析した。ウサギ耳介皮膚交感神経血管収縮線維には、1)中枢性呼吸活動に一致した周期的活動が存在する、2)心拍に一致した周期的活動はない、3)ほかの交感神経には認められない約0.5Hzの周期的活動があることが判明した。1)と2)の呼吸や心拍に動機した活動は、腎臓交感神経などに一般的に認められる特徴であるのに対して2)の心拍に同期した活動がない。延髄の耳介交感神経のプレモータニューロンの同定を試みた。その結果は、まだ未だ記録されたニューロンの数が少ないため結論を出すにいたってないが、少なくとも従来から知られている交感神経の血管収縮線維と知られているRVLMニューロンは視床下部体温調節中枢の直接的な温度刺激に応答しないことが判明している(学会発表予定)。
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