ヒトにおける実験からトレーニング効果としての血液量の増加に血液アルブミン量の増加が関与している可能性が示唆されている。アルブミンは膠質浸透圧を維持し、1gのアルブミンは18mlの水と結合すると言われている。申請者は人において強度運動後に血液量の増加とともに血液アルブミン総量が増加することを報告し、トレーサーを用いた研究から肝臓でのアルブミン合成がこの現象に関与している可能性を示している。 血液アルブミンの増加のメカニズムとしてはこのアルブミン合成の増加のほかに、血管内外のアルブミンの分布の変化の2つが大きな要因であると申請者は考えている。このメカニズムを解析するには小動物を用いた実験が必要と考えられる。今回の実験計画ではラットを使った運動トレーニングの方法を確立すること、肝臓でのアルブミン合成をアルブミンmRNAを測定し直接評価し、血液量調節との関係を明らかにすること、運動時のリンパ管系を介した間質から血管内へのアルブミンの動き、毛細血管での間質へのアルブミンの動きを定量化することの3つを大きな目的とする。実験仮説としては動物の活動性(運動量)に伴い血液量、血液アルブミンは増加し、同時に肝臓でのアルブミンmRNAが増加することを予想している。また運動により間質より血管内へのリンパ流が増加する結果、血液アルブミン総量が増加すると予想している。さらに肝臓でのmRNAが運動により増加することが実証されれば、運動により変化する因子、交感神経活動、ストレスホルモンに着目しアルブミン合成ならびに血液量変化への影響を調べている。
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