ラット島皮質の前方部は味覚、後方部は自律機能に関する中枢と考えられている。前方部と後方部の明確な解剖学的境界線は明らかでないが、味の感覚に最も重要な働きを示す鼓索神経が投射する島皮質の前方部を味覚野と定義し、それより後方部を島皮質後方部と便宜的に定義することができる。これまでの我々の電気生理学的研究から島皮質後方部は舌後方部や口腔後方部からの味覚やその他の感覚情報を伝える舌咽神経や上喉頭神経が投射すること、又動脈圧受容器及び化学受容器刺激などの内臓感覚刺激にも応答を示し、更に、tail pinch等の痛覚刺激にも応答するmuliti-modalなニューロンが多数見られる。このように島皮質後方部に多種の感覚情報が入力することが明らかとなったが、島皮質後方部の機能及びその神経回路の詳細は明らかでない。島皮質への入力系及び出力系については神経解剖学的研究により、視床、視床下部、橋、弧束核、分界条床核、辺縁下皮質、扁桃体など多数の部位が報告されている。我々は島皮質後方部の神経回路を電気生理学的に明らかにすることを目的としている。平成12年度において、脳の前方-後方軸で、bregmaから1-4mm後方の様々な深さの脳部位を電気刺激し、島皮質ニューロンの順行性及び逆行性活動電位を電気生理学的に細胞外記録した。視床網様核や内包の電気刺激に逆行性にあるいは順行性に応答する島皮質ニューロンが多数みられ、これらの部位を経由する島皮質後方部への入力あるいは島皮質後方部からの出力があることが示された。
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