研究概要 |
1.糖質消化吸収関連遺伝子の甲状腺ホルモン核内受容体(TR)を介した調節機構の検討:小腸における主要なTRサブタイプであるTR-αおよびその標的遺伝子である糖輸送担体GLUT5について、出生後の発達過程における発現変動の関連性を検討した。ラットの小腸にはTRα-1とTRα-2の2つのアイソフオームが発現していた。生後13日から20日にかけてTRα-1の発現だけが一過的に上昇し、これに伴い小腸の糖輸送担体(GLUT5,GLUT2,SGLT1)のmRNA量が平行して増大した。この時期にT_3を投与すると、いずれの糖輸送担体の遺伝子発現量もさらに増大した。分化型ヒト小腸様細胞株Caco-2でもT_3によってTRα-1とGLUT5の遺伝子発現が増大した。GAL4-TRキメラレポーターアッセイ法によりT_3による転写活性化能をTRα-1とTRα-2で比較してみたところ、TRα-1にのみ転写活性化能が見られた。従って、哺乳・離乳移行期に見られる小腸の糖吸収関連遺伝子の発現上昇はTRα-1の発現量の増大を介して起こっている可能牲が示唆された。 2.糖質消化吸収関連遺伝子の日内リズム形成機構の検討:核Run-on assayにより、ラット小腸におけるスクラーゼ・イソマルターゼ複合体(SI)および糖輸送担体(GLUT5,GLUT2,SGLT1)は転写レベルで同調した日内変動を示すことが明らかになった。時計遺伝子per2およびBMAL1は小腸でも発現しており、食餌摂取のタイミングにより糖質消化吸収関連遺伝子の発現と同様に位相のシフトを示した。SI遺伝子の転写抑制因子E4BP4の発現は糖質消化吸収関連遺伝子とは逆の位相で日内変動を示した。従って、小腸における時計遺伝子群の発振するリズムがE4BP4を介して、糖質消化吸収関連遺伝子の発現量に日内変動をもたらしていることが示唆された。
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