研究概要 |
1.小腸における遺伝子発現と関連する転写補足因子(Coactivator)の検討:主要な転写補足因子として、ラットのCBP、p300、AEA70、TIF2、SRC-1のcDNAをクローニングした。CBPとp300が小腸で高い発現性を示した。 2.発達に伴う糖質消化吸収関連遺伝子の発現変動と関連する転写調節因子の検討:ラットの小腸に発現している甲状腺ホルモン受容体TRα-1とTRα-2のうち、TRα-1の発現だけが生後13日から20日にかけて一過的に上昇した。これに伴い小腸の糖輸送担体(GLUT5,GLUT2,SGLT1)のmRNA量が平行して増大した。この時期にT_3を投与すると、いずれの糖輸送担体の遺伝子発現量も増大した。哺乳・離乳移行期における小腸の糖吸収関連遺伝子の発現上昇はTRα-1を介して起こる可能性が示唆された。 3.核内転写因子のリン酸化・脱リン酸化調節による転写活性の変動:大腸菌で発現させたCdx-2をPKAでリン酸化したところ、ラクタ.ゼ(LPH)遺伝子転写制御領域への結合活性が低下した。Caco-2細胞におけるLPHmRNAの発現量はT_3とアデニル酸シクラーゼの活性化剤forskolinの同時投与により著しく低下した。スクラーゼ・イソマルターゼ(SI)遺伝子の転写制御領域へのCdx-2二量体の結合はPP1によるCdx-2の脱リン酸化により促進された。 4.糖質消化吸収関連遺伝子発現の日内リズム形成機構の検討:ラット空腸から調製した核を用いてRun-on assayを行った。SIと糖輸送担体は転写レベルで同調した日内変動を示した。時計遺伝子per2とBMAL1は小腸でも発現し、食餌摂取のタイミングにより糖質消化吸収関連遺伝子の発現と同様に位相のシフトを示した。SI遺伝子の転写抑制因子E4BP4の発現は糖質消化吸収関連遺伝子とは逆の位相で日内変動を示した。
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