高温ストレス耐性と他の環境ストレス耐性との関係(交差耐性・交差適応)を、遺伝的に高温ストレス耐性FOKラットと対照系で比較研究して、下記の成果を得た。 [a] FOKラットにのみ高温域で強力に発動されてくる蒸発性熱放散が見られた。FOKラットは体重の14%の脱水に耐えながら、中枢神経によるネガティブ・フィードバック調節によって蒸発を精密に調節しいた。体温を37℃まで下げることなく39-40℃に維持して暑熱と脱水に耐えるメカニズムであった。 [b] 各種の脳傷害の検討をおこなった。estrogenは、3-NPAによる脳血管上皮細胞障害を予防した。脳線状体出血後、出血部位周囲と中脳黒質に有機オスモライトであるNa/myo-inositol cotransporter (SMIT)mRNAが発現した。線状体は3-NPAにたいして脆弱であった。そのの原因は、細胞傷害性ニューロンが多い事や血管脆弱性等によった。heat strokeによる傷害にたいしても、線状体が脆弱である可能性がある。 [c] 近交系FOKラットは多面的特性、とくに交差耐性があった。FOKラットは、耐寒性でもあり、血中脂質濃度が低くて高脂血症になりにくかった。さらに心理的ストレス発熱が大きい系統の一つであり、LPS発熱が大きな系統の一つであった。 [d] cDNA Micro Array法による遺伝子探索で、FOKラットの視床下部では対照系ラットよりも、AIM、aldosterone receptor、iron-resposive element-binding protein mRNAの発現が多かった。とくに、aldosterone receptorは、高浸透圧と脂肪代謝に関与しており、FOKラットで見られる交叉耐性適応との関連が示唆された。さらに、Quantitive Trait Loci(量的形質関連遺伝子座)解析を、現在遂行中である。
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