研究概要 |
暑熱環境下における労働や運動時に生じる熱中症は,近年日常生活時に発生している。都市部においては,heat island化の問題が指摘されており,気象台で観測される温度より高温に曝露されていることが考えられる。夏期の日常生活において室内は空調により低温に保たれているが屋外は高温環境であり,温度変化が問題と考えられるので,その実態について調査した。 1)市街地温度と気象台温度の比較:京都市内市街部の6カ所で,乾球温・湿球温・黒球温は,気象台観測値に比しておおむね3〜4℃高値を示すが,時には気象台観測値より低値を示す時間帯が見られた。 2)日常生活で曝露される温度(10分間隔で3日間)を観察した。 (1)気象台観測値は,夜に低く日中に高い周期的な日変化を示すが,被験者の曝露温度は,日中に冷房のある室内での滞在時には夜間の最低値よりもさらに低温に曝露され,自然温度の日周期と乖離し,日常生活行動では人工環境だけでなく自然環境にも曝露されるので曝露範囲が拡大されていることが示された。 (2)冷房の室内(低温)から自然環境(高温)への移動による急激な温度変化がみられた。 3)わが国の高温による死亡(熱中症)の発生を人口動態統計から疫学的検討をした。 (1)1968年から1997年までの30年間で2988件(男1912件,女1076件)で,年次ごとには,26件(1982年)から589件(1994年)であり,総死亡に対する割合は0.037‰,0.672‰であった。年齢別では,30年間の累積にすると4歳以下と70歳以上が多く両者を合わせると50.1%にもおよんだ。 (2)年次ごとの発生件数と年間の日最高温度32℃,34℃,36℃以上の日数との間にはそれぞれ相関関係が認められた。また,日最高温度が38度を超えるような日が出現する年では熱中症件数が高値を示した。
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