研究概要 |
近年、内皮由来弛緩因子の中で、NO,PGI_2とは別の血管弛緩因子、内皮由来過分極因子(EDHF)の存在が注目されている。しかしながら、現在の所、EDHFの本体、その合成酵素、ならびにEDHFの標的イオンチャネルも同定されていない。本研究では、EDHFの標的イオンチャネルを同定・クローニングし、EDHFの生理学的病態生理学的役割を検討するための基礎実験を行うことを目的とした。 方法としては、まず、EDHFの標的イオンチャネルの候補として上がっているCa^<2+>-activated K^+ channel(KCa)をクローニングし機能的解析を行うこととした。KCaはSK1,SK2,SK3,IK,BKに分類されているが、それぞれに特徴的なプライマーを作成しRT-PCRにより、KCaチャネルファミリーのcDNA断片を増幅させた。その結果、ラット脳には、SK1,SK2,SK3,BKの各遺伝子の断片が増幅された。ラット心臓にはSK3,IK,ラット腸間膜動脈にはSK3,IK,BKの増幅を確認した。次にラット腸間膜動脈に発現するSK3,IK,BKのクローニングに取り掛かった。SK3はラット心臓から作製したcDNAライブラリーのスクリーニングおよびPCR法によりクローニングした。BKはPCR法によりクローニングした。IKはクローニング中である。Sequenceの結果、従来報告されている、SK3チャネルおよびBKチャネルに類似した遺伝子がクローニングされたが、BKにおいて9塩基のinsertionを認めた。現在この遺伝子を動物細胞に発現させて、機能解析を行っている。また、SK3,BKのmutationを作製し、dominant negativeによる機能解析も進めている。また、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、各K^+ channel局在を検討している。
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