放射線治療を受けた後の組織における外科的処置では、易感染性や創傷治癒の遅延などの術後合併症の頻度が高いことが知られており、その原因として、放射線照射後の血栓形成をはじめとする血管障害が考えられている。我々は先に、ウサギの耳にCo^<60>を照射後の摘出耳動脈輪状標本において、血管内皮細胞の形態学的変化を起こさずに血管内皮由来NOによる弛緩反応が特異的に減弱することを報告した(Qi等、Br.J.Pharmacol.1998年)。このことは、血管内皮機能特にNOを産生するプロセスが、放射線照射により影響を受けることを意味する。そこで血管内皮NO合成酵素(eNOS)の発現量を、ウェスタンブロット法を用いて測定したところ、eNOS量は有意に放射線照射により減弱していることを見出した。次年度は、今年度に確立した培養ブタ大動脈内皮細胞を用い、放射線照射によるeNOSのタンパクおよびmRNAレベルでの発現減少を確認し、これがeNOSの転写段階でどのような修飾によって起きるのかについて研究を進める予定である。
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