タンパク質のZnフィンガー構造は一般的にDNA結合活性を持っているが、本申請者が見い出したある種のZnフィンガー様反復構造は、低分子量GTP結合タンパク質の一種であるRanと特異的に結合する。Ranは真核細胞内で最も多量に存在する低分子量GTP結合タンパク質であり、核細胞質間のタンパク質の能動的な輸送や、DNAの複製に直接関与することなど、その多様な生理的機能の全体像がしだいに明らかにされてきている。一方、癌遺伝子産物であるMDM2は、この特殊なZnフィンガー様構造と類似した構造を持っている。MDM2は癌抑制遺伝子産物p53に結合しその機能を阻害するとともに、p53をユビキチン化し、その分解を促進することが分かっている。また、MDM2には多くの癌で細胞癌化の原因とされる変異が見つかっており、癌治療薬の潜在的標的となりうる分子である。 我々は、MDM2のZnフィンガー様構造がRanと特異的に相互作用するかどうかを確認するために、MDM2とRanの各たんぱく質を大腸菌で産生し、いわゆるプルダウンアッセイを行い、これらのタンパク質がin vitroにおいて特異的に結合することを確認した。同時に、RanのMDM2タンパク質との結合が、GTP結合型優位であるのか、あるいはGDP結合型優位であるのかを、Ranの変異体を利用して確認したところ、GTP結合型に優位に結合することが明らかとなった。
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