核膜孔複合体タンパク質であるNup153のZnフィンガー様構造は、従来、特異的な塩基配列を認識するDNA結合活性を持つと考えられていた。本研究では、このドメインが、低分子量GTP結合タンパク質の一種であるRanと特異的に結合することを明らかにした。Nup153のZnフィンガー様構造は、基本的配列が四回反復しているが、この基本的配列とホモロジーを持つタンパク質をデータベースで検索してみると、いくつかのタンパク質がこの基本的配列を1回、あるいは2回反復する形で保持することが明らかになった。そのため、このZnフィンガー様構造が、単独、あるいは2回反復する形でも、Ran結合活性を持っているかどうかを検討するため、反復配列を断片化し、各断片のRan結合活性をTwo-Hybrid法を利用して検討した。その結果、Znフィンガー様アミノ酸配列が2回反復する形でも、ある程度、Ran結合活性を保持していた。また、この配列を1回のみ持つペプチド鎖のRan結合活性は測定限界以下であった。この結果をふまえ、Nup153のZnフィンガー様反復アミノ酸配列を1回のみ持つヒト癌遺伝子産物MDM2を例にとり、Ran結合活性を検討した。Two-Hybrid法を使用した場合、Ran結合活性は確認できなかったが、in vitroの、いわゆるプルダウン法を使用してMDM2のRan結合活性を観察することができた。
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