HERGチャネル第6膜貫通領域(S6)の脱活性化に与える影響とアミノ(N)末端領域(遅い脱活性化に関与すると報告されている)との関係ならびに脱活性化の遅延と薬物作用との関係について検討した。 1.点変異体を作製して検討したところ、HERGチャネルS6の647番目にPhe、Tyr、Trpが存在する際にチャネル脱活性化の遅延が認められた。このアミノ酸はチャネルが開口する時にその部位で曲がると考えられているgating hinge (Gly)の直ぐ隣である。そこに芳香環を有するような大きなアミノ酸が存在するとチャネルが閉状態に戻る上で障害になるものと思われる。 2.脱活性化の速度を決める上でN末端領域とS6との間に何らかの関係があるのかどうかを検討する目的で、野生型(WT)と脱活性化が遅延しているI647F変異体についてN末端を欠失させたWTΔ2-354、I647FΔ2-354を作製した。それらN末端欠失変異体とWTおよびI647Fを流れる電流を比較したところ、I647FΔ2-354を流れる電流の脱活性化はI647Fよりもはるかに速くなっていたが、WTΔ2-354よりは依然として遅いものであった。この結果からすると、N末端領域とS6は別の機構によって脱活性化に影響を与えているのであろうと考えられた。 3.脱活性化速度の遅延が認められるI647F、I647Y、I647Wにおいて各種薬物の作用が減弱していた。I647FΔ2-354を用いた検討の結果、647番目のアミノ酸の変異そのものが薬物作用を減弱させているのは間違いないが、脱活性化速度の遅延も薬物作用に影響を与えている可能性が考えられた。 4.脱活性化とN末端領域の数との関係を調べるためにN末端欠失変異体とWTとのタンデム変異体を作製した。しかしながら、それらタンデム変異体においては明らかなK^+電流が観察されず、残念ながらその点についての検討は出来ていない。
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