研究概要 |
ヒトα_<1A>アドレナリン受容体の第3細胞内ループのアミノ酸をアラニンからスレオニンに置換したミュータントを作製し,CHO細胞に発現して以下の成績を得た。 1.ミュータント受容体を発現した細胞は,アゴニスト非存在下でも有意のIP_3産生亢進を示し,構成的活性化受容体constitutively active receptorであった。 2.このミュータントの構成的活性化は,prazosin,phentolamine,WB4101,BMY7378など多くのアンタゴニストで抑制されたが,KMD-3213は無影響であった。従って,従来からアンタゴニストとして使用されている薬物はほとんどがインバースアゴニストであり,KMD-3213はニュートラルアンタゴニストであることが明かとなった。 3.インバースアゴニストprazosinの作用は,ニュートラルアンタゴニストKMD-3213により競合的に拮抗された。 4.インバースアゴニストprazosinをあらかじめ処置して構成的活性を抑制した状態にニュートラルアンタゴニストKMD-3213を添加すると,インバースアゴニストの抑制が解除され,その結果KMD-3213は見掛け上アゴニストのように作用することが明かとなった。 以上,ヒトα_<1A>アドレナリン受容体ミュータントを用いて,インバースアゴニスト,ニュートラルアンタゴニストを同定し,それらの相互作用を明かにした。本結果は,両タイプの薬物を併用した場合,薬効が弱まる場合があることを示したもので,貴重な臨床薬理的知見になると思われた。
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