G蛋白質共役型受容体の刺激時に活性化されるCa^<2+>透過型陽イオンチャネル(receptor-operated cation channels;ROCCs)は、広く生体内に分布し、様々な生病理機能の発現・調節に関与している可能性が高いが、その分子実体は全く不明であった。本研究では、TRP蛋白質(transient receptor potential protein)の脊椎動物ホモログとROCCsが分子レベルで密接に対応している可能性に着目し、その分子的対応関係を探索した。初年度は、TRP蛋白質の脊椎動物ホモログ、TRP6が、α_1アドレナリン受容体活性化に伴って生じるCa^<2+>流入チャネル(血管緊張性の維持に中心的な役割を果たしていると考えられている)の必須の構成分子として働いていることを、以下の実験結果から明らかにした。(1)マウスのTRP6をHEK細胞に組換発現すると、α_1アドレナリン受容体刺激で開口するCa^<2+>透過型陽イオンチャネル(NSCC)とほぼ同一の生物物理学的・薬理学的性質を示すチャネル活性が得られた。(2)ウサギ門脈を始めとする幾つかの血管平滑筋組織にはTRP6が豊富にかつ特異的に発現していることを、TRP6抗体による免疫組織学的手法やTRP6特異的プライマーを用いたRT-PCR法で確認した。(3)これらの組織から得られた平滑筋細胞をアンチセンスオリゴ処理すると、α_1アドレナリン受容体NSCCの活性やこれを介したCa^<2+>流入が著しく抑制されることを確認した(Circulation Research印刷中)。今後は、消化管の筋細胞やCajal細胞、膵臓の内外分泌腺細胞など、TRP mRNAの発現が見られる組織において、G蛋白質共役受容体活性化時に生じるCa^<2+>流入にTRPのサブタイプが分子レベルでどのように関与しているか、更に検討してく予定である。
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