研究概要 |
本研究の目的は筋細胞の細胞内Ca^<2+>放出チャネル(CRC)であるリアノジン受容体(RYR)と吸入麻酔薬との相互作用に対して、RYRに結合しているFK506結合蛋白質(FKBP)が及ぼす効果を解析することにある。本年度はFKBPが結合している場合としていない場合でRYRのCRC活性に対する吸入麻酔薬ハロタンの作用に変化が見られるか否かを、筋小胞体(SR)分画を用いた(1)RYRに対する[^3H]リアノジン結合実験、(2)Ca^<2+>汲み込み実験により解析する事を試みた。 (1)native及びFKBP-free SR分画に対する[^3H]リアノジン結合実験を吸入麻酔薬の非存在下及び存在下で行った。各SR分画に対する[^3H]リアノジン結合の解離定数,最大結合量はハロタンの存在により優位な変化を認めなかったが、活性化のCa^<2+>濃度依存曲線はFKBP-free SR分画の場合、native SR分画と比較してやや左にシフトした。 (2)nativeおよびFKBP-free SR分画を用いてCa^<2+>汲み込み実験をハロタンの非存在下及び存在下で行った。本実験はCa^<2+>指示色素としてアンチピリラゾIII(APIII)を用い、ATP添加によりSR膜のCa^<2+>/ATPaseを活性化した条件で行った。FKBPを除去することによりハロタン非存在下でのSRへのCa^<2+>汲み込みはnative SRに比べて優位に遅くなったが、これはこれまでの報告と一致した。ハロタン存在下でもFKBP-free SR分画へのCa^<2+>汲み込みはnative SRと比べ、若干遅くなることが観察された。 これらの結果はFKBPを除去することによりRYR/CRCがleakyになる現象がハロタンの存在下ではより顕著になる可能性を示唆するものであるが、対照群との差が小さいので今回の知見が確実なものであるかどうかを現在実験例を増やして詳しく検討中である。
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