生体位動物において消化管運動測定とin vivoマイクロダイアリシス法による神経伝達物質放出量測定とを同時に行うことによって、消化管運動変化におけるメカニズムとして神経伝達物質放出量との関連性の有無を確認するために、交感神経と副交感神経の関連性、受容体の活性などが生理的に作動しているか否かを確認し、本法を用いてセロトニン系、GABA系の消化管運動への関与を検討した。実験方法:麻酔下イヌ空腸の筋層内に留置したプローブ灌流液中のアセチルコリン(ACh)量測定と、漿膜面に縫着したストレインゲージ・フォース・トランスデューサーを用いて蠕動運動記録を行った。結果:テトロドトキシンでACh放出量の低下と空腸運動の低下が起こったことから、腸管の運動は主にコリン作動性神経によって調節されている。ヨヒンビンでACh放出量の増加と運動亢進が起こったことから交感神経がAChの放出を制御している。アトロピンでACh放出量は増加したが運動も低下したことから、コリン作動性神経にあるムスカリン自己受容体(負のフィードバック)が働いている。したがって、生体内であらゆる神経活動が存在している生理的状態で、腸管運動は主に副交感神経系によって調節されており、副交感神経系は交感神経系の制御と、自己受容体の制御を受けていることが明らかになった。このことは、前年(平成12年度)に報告した化合物が消化管運動賦活薬として臨床応用される可能性を示すものである。セロトニンはACh放出の促進と消化管運動を亢進し、その作用は5-HT_4受容体拮抗薬によって阻害された。GABAは一過性にACh放出の促進と消化管運動の冗進を起こしたが、その後ACh放出の抑制と運動の低下を起こし、生体内ではGABAは主に抑制系であることが明らかになった。セロトニン系に加えて、GABA系の薬物が消化管運動調節薬として創製される可能性を示した。
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