生体位動物において消化管運動測定とin vivoマイクロダイアリシス法による神経伝達物質放出量測定とを同時に行うことによって、消化管運動変化と神経伝達物質放出量との関連性の有無を確認するために、交感神経と副交感神経の関連性、受容体の活性などが生理的に作動しているか否かを確認し、本法を用いてセロトニン系、GABA系の消化管運動への関与を検討した。 実験方法:麻酔下イヌ空腸の筋層内に留置したプローブ灌流液中のアセチルコリン(ACh)量測定と、漿膜面に縫着したストレインゲージ・フォース・トランスデューサーを用いて蠕動運動記録を行った。 結果:1.生体内であらゆる神経活動が存在している生理的状態で、腸管運動は主に副交感神経系によって調節されており、副交感神経系は交感神経系の制御と、自己受容体の制御を受けていることが明らかになった。2.セロトニンおよび腸運動賦活薬のモサプリドは5-HT4受容体を介して腸運動を亢進しACh遊離を増加した。受容体オートラジオグラフィー法により、腸に5-HT4受容体が存在することが判明し、モサプリドは5-HT4受容体に結合することが証明できた。3.GABAは一過性にACh放出の促進と消化管運動の亢進を起こしたが、その後ACh放出の抑制と運動の低下を起こし、生体内ではGABAは主に抑制系であることが明らかになった。セロトニン系に加えて、GABA系の薬物が消化管運動調節薬として創製される可能性を示した。4.Z-338という化合物はムスカリン自己受容体を遮断することを遺伝子移入再構成系を用いた実験系(卵母細胞)で明らかにし、また平滑筋のムスカリン受容体に対する阻害作用がないことを証明した結果、Z-338がACh遊離を促進し、消化管運動賦活薬として用いられる可能性があることを提唱した。
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