ブラジキニンはその多種多彩な作用を極微量で発揮し、血圧調節や炎症といった生体の恒常性維持や病態に密接に関わるオータコイドである。その特異的受容体として恒常的に発現されているB_2受容体と、炎症反応時に誘導されるB_1受容体の2つのタイプが報告されている。非ペプチド性B_2受容体受容体刺激薬FR190997を用いて気道におけるブラジキニン受容体の薬理学的解析を行い、その性質について調べた。その結果、その結果FR190997は、血管透過性亢進作用、酢酸ライジングにおける痛み、カラゲニン足浮腫、血管新生促進作用などのin vivoにおける反応は、ブラジキニンに比較して作用がより持続的であった。ところがFR190997のB_2受容体刺激作用は、気道においては消失していた。すなわち気道抵抗の増加作用や摘出気管・肺切片標本の収縮活性は、ブラジキニンとは異なり殆ど認められなかった。この結果は気道におけるブラジキニン受容体が従来のタイプとは異なること、または受容体以降のシグナル伝達やその調節機構が他の臓器とは異なることを示唆する。一方で気道抵抗におけるブラジキニンと他の生理活性物質との機能的共役を解析した。降圧薬として開発候補である中性エンドペプチダーゼ阻害薬は、ブラジキニンにより遊離されたニューロキニンAの分解を抑制し気道抵抗の増加を引き起こしていることが解析され、両ペプチドの生物学的機能共役が判明した。また血管系でブラジキニンと相反連関する、すなわち平滑筋拡張性ガス状メディエーターの一酸化窒素との連動について検討した。その結果、気道ではブラジキニンが直接一酸化窒素の発生と共役するよりも、ニューロキニンAがその気道抵抗増加に対して代償的に一酸化窒素を発生させることが示唆された。以上の結果から、気道では幾つかの活性物質がクロストークすることにより、その機能を調節していることが考えられる。
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