本研究は、アミノ酸トランスポーターを介する薬物輸送の分子機序を解明することを目的とするものであり、すでに同定したアミノ酸トランスポーターの代謝臓器、吸収・排泄臓器、血液・組織関門における発現の検討、薬物及び薬物抱合体輸送のスペクトラムと輸送の機序の解析とともに、未同定のアミノ酸トランスポーターの分子的実体を解明することをその内容とする。本研究においては、輸送系Lアミノ酸トランスポーターLAT1、LAT2について、アフリカツメガエル卵母細胞発現系、LAT1を選択的に発現するヒト膀胱癌由来T24細胞、及びヒトLAT1、ヒトLAT2をマウス腎尿細管由来S2細胞に導入することによって樹立した安定発現細胞を用いて、薬物の輸送活性を検討し、LAT1が、L-ドパ、α-メチルドパ、α-メチルチロシン、Gabapentin、甲状腺ホルモントリヨードサイロニン及びサイロキシン、抗腫瘍薬メルファラン等のアミノ酸類似化合物を輸送する広い基質選択性を有することを明らかにした。これによりLAT1が薬物トランスポーターとして位置付けられた。また、メチル水銀はシステイン抱合体としてLAT1およびLAT2を介して輸送されることが明らかになった。さらにT24細胞及び樹立した安定発現細胞を用い、KYT0193、KYT0206、KYT0213と名付けた輸送系L新規高親和性化合物を見い出した。LAT1について、特異抗体を用いて免疫組織化学的検討を行なったところ、LAT1は、その補助因子4F2hcとともに、血液・脳関門及び胎盤関門に存在することが明らかになった。また、未知のアミノ酸トランスポーターの分子クロニングを行い、新規芳香族アミノ酸トランスポーターTAT1、ヘテロ二量体型トランスポーターファミリーの新規メンバーAsc-2及びAGT1を同定した。
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