目的:新しい血管作動性ペプチドであるConnective Tissue Growth Factor(CTGF)は、TGF-βにより誘導され、繊維芽細胞の増殖を来す。我々は腎臓硬化症におけるCTGFの役割を解明するために、腎メサンギウム細胞に静的圧力負荷を加え、CTGF制御及びその作用を検討した。さらに、CTGFがメサンギウム細胞にアポトーシスを誘導する基序を網羅的に検討するため、DNAマイクロアレイ法によりリコンビナントCTGFの作用を検討した。 方法:培養メサンギウム細胞を我々既報のヘリウムガス法により加圧(0-120mmHg)しメサンギウム細胞増殖に対する作用をMTT assayにより評価した。圧力負荷(0-120mmHg)によるCTGF制御は、CTGFに対するポリクロナール抗体を用いたWestern blotにより検討した。ヒトメサンギウム細胞を24時間無血清培地で培養後、リコンビナントCTGFで48時間処置した。アポトーシス誘導作用はMTT assay、TUNEL法、核染色、DNA fragmentation、Flow cytometryにより検討した。DNAマイクロアレイ法による解析には、リコンビナントCTGFで48時間処置後、poly A RNAを抽出し、Cy3、Cy5でラベル後、HUMAN Apoptosis CHIP(TAKARA)にハイブリダイズし、GMS418 Array Scannerにてscanした。解析にはImaGeneを用い、シグナル補正はベーターアクチンを基準に行った。 結論:CTGFはメサンギウム細胞にapoptosisを誘導し、増殖を抑制する。圧力負荷によるcell viabilityの低下がCTGFアンチセンスオリゴ処置により有為に抑制されたことにより、高血圧性腎障害の発症機序の一部にCTGFが関与している可能性が示唆された。 DNAマイクロアレイ解析の結果より、CTGFはヒトメサンギウム細胞において、Bcl2関連遺伝子のみならず、MAPKやサイクリン依存性キナーゼ等多くの遺伝子に同時に働きかけてアポトーシスを誘導することが明かとなった。我々の結果はCTGFのアポトーシス誘導機序を明らかにするのみならず、抗CTGF抗体の腎硬化症治療における可能性を示唆している。
|