平成13年度科学研究費補助金により以下の実績を得た。 虚血性急性腎不全の進展と維持におけるエンドセリンET_B受容体の役割を昨年度と同様にET_B受容体遺伝子欠損ラットを用いて調べた。実験には腎虚血再灌流モデルを用いた。虚血性急性腎不全はあらかじめ右腎摘除を施した動物の左腎動静脈を結紮して45分間血流を遮断し、次いで血流を再開することにより作成した。再灌流24時間後から一定時間採尿を行い、糸球体濾過などの腎機能を評価した。また一部の動物においては、再灌流24時間後に腎臓を摘出し、腎組織標本を作製して、腎組織障害を光学顕微鏡により調べた。同時に腎組織中のエンドセリン-1含量も測定した。腎虚血再灌流により、腎機能並びに組織障害はET_B受容体遺伝子欠損ラット、野生型ラット両動物群で同程度に認められ、これらの障害は時間経過とともに徐々に回復した。しかしながら、再灌流7日後の腎機能を比較した場合、野生型に比しホモ接合体においてその回復状態は明らかに遅延していた。また虚血再灌流後の腎ET-1含量の増大はホモ接合体において顕著であった。 以上、ET_B受容体を介する作用は虚血性急性腎不全の進展に深く関与しないものの、腎虚血再灌流障害からの腎機能回復過程には密接に関わることが考えられた。また以前の結果を考え合わせて、本病態の発症、進展におけるET_A受容体を介する作用の重要性が確認されるとともに、選択的ET_A受容体拮抗薬が臨床的にも有用である可能性が示唆された。
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