(1)合成ペプチド基質を用いたCaMキナーゼホスファターゼ(CaMKP)の基質特異性の解析---CaMKPの特徴は、多機能性CaMKを特異的に脱リン酸化して、活性の調節を行うことである。そこで本酵素の基質特異性を調べるために、さまざまなリン酸化ペプチドを合成し群細な解析を行った。その結果、CaMKPはリン酸化部位のアミノ酸としてスレオニンを好むこと以外は、リン酸化部位周辺のアミノ酸配列に関する特異性が低いことが判明した。これらの結果から、CaMKPの厳密な基質特異性が、基質タンパク質の高次構造により決まることが示された。 (2)CaMKP-Nのクローニングとその解析---CaMKPと類似の新現のプロテインホスファターゼを見出し、CaMKP-Nと命名した。遺伝子クローニングによりその全一次構造を決定したところ、これらの酵素の触媒ドメインの相局性は64%であった。CaMKP-NもCaMKPと同様、多機能性CaMKに対して高い基質特異性を示し、ポリカチオンによる著しい活性化が観察された。また、CaMKP-Nは、脳に豊富に含まれており、細胞内では核に局在するユニークなプロテインホスファターゼであることがわかった。 (3)ポリカチオンによるCaMKPの活性化機構---CaMKPによるCaMKの脱リン酸化反応はポリカチオンにより著しく活性化されるが、そのメカニズムは不明であった。そこでさまざまなポリカチオンを用いて、本酵素の活性化機構について検討してみた。ポリリシンだけでなくプロタミンやヒストンなどの塩基性タンパク質でも活性化が見られることも明らかになった。また活性化に際してCaMKとCaMKPとが同一のポリカチオン上に結合し、反応の橋渡しをするものと考えられた。また、遺伝子工学的手法により、ポリカチオンとの相互作用には、CaMKPのN末端領域のポリグルタミン酸配列が重要な働きをすることが明らかになった。
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