研究概要 |
本研究はATBF1のhomeodomain1から4の結合するDNA構造を決定し、ATBF1により発現が制御される一連の遺伝子群を類推し、臓器特異的な遺伝子発現調節機構を解明しようとするものである。 研究はhomeodomian4を中心に進行中である。現在、homeodomain4,zinc finger21,ATPase A motifを含む部分の蛋白AHZが、AT-rich motifではない他の塩基配列、すなわち、塩基配列特異性を示さない様式でRNA,DNA両方に依存するATPase活性を示すことが新たに明らかになり、その働きの意義を考察するとともに、発表を準備中である。さらにATBF1のホモローグであるZFH4の全塩基配列を決定し発表を終える事が出来ている。現在このATBF1,ZFH4両者の抗体を作製し、特に中枢神経系における発現の検討を行うことにより、違った角度から遺伝子発現調節機構の解明にも取り組んでいる。ATBF1の染色の検討により、全く新たな事実として、ラットの脳神経系の発生の過程でATBF1の発現が、神経細胞が最後の核分裂を終えて脳室の辺縁の領域に移動してから起こり、神経細胞の分化を完成させる時期に起こることを見いだしている。さらに部位の特異性の詳細も明確に出来ており、従来の研究で明らかになっている大脳基底核群、視床、視床下部、上丘、下丘、延髄、橋、脊髄に加え、新たに見いだした部位である小脳の一部、松果体、鼻前庭細胞、視神経の知覚細胞での発現を明らかにすることが出来た。これらの発現部位特異性は他のhelix-loop-helix遺伝子でも報告されており、ATBF1の発現より以前に発現する遺伝子群に対しATBF1,ZFH4をはじめとするzinc finger-homeodomian familyのメンバーがリプレッサーとして作用し、神経細胞の分化を完成させるような調節をしている可能性が出てきており、興味深い問題を提起することが出来ている。 今後、さらにZFH4の抗体の精製により、中枢神経系での分布、発現時期とも比較検討することで、さらにfamily内の遺伝子同士の相互関係を探る予定である。またATBF1,ZFH4の発現比較を、脊髄に焦点を当てた詳細な研究へ発展させることも予定している。
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