研究概要 |
本研究はATBF1のhomeodomain 1から4に結合する核酸の特異性を決定し、ATBF1による遺伝子発現調節機構を解明しようとするものである。研究は核酸との接着の確認が容易であったhomeodomain 4を中心に進行した。 1. Multiple homeodomain-zinc finger proteinであるATBF1のATPase活性の研究(Biochimica et Biophysica Actaに発表)ATBF1は4個のhomeodomainと23個のzinc fingerを有する404kDにおよぶ巨大な転写因子で、因子内にATPase A-motifを持ち、ATPase活性を有する可能性が示唆されていた。われわれはATPase A-motifとともにhomeodomain 4、zinc finger21を含む263アミノ酸部分を含むGST融合蛋白(AHZ)を作製することにより、ATBF1に実際にATPase活性があることを全く新たな事実として示すことに成功した。今回の研究では、AHZが特に塩基配列特異性を示さない様式でRNA, DNAいずれとも結合能を示すこと、さらにRNA, DNA両方に依存するATPase活性を示すこと、またRNAおよびDNAとの結合、あるいはATPase活性を示す際にhomeodomain, zinc finger両者の存在が必要であることを明らかにした。 2. ZFH4の全配列決定(Biochemi Biophys Res Communに発表)。我々はまた、同じMultiple zinc finger-homeodomain protein familyに属しATBF1のホモローグであるマウスZFH4の全塩基配列を決定するとともに、生体内でmRNAの発現部位がATBF1と類似していることを示した。さらにZFH4のATPase A-motif, homeodomain 4およびzinc finger20から作製した蛋白にATBF1同様のATPase活性を示すことを明らかに出来た。 以上の結果はATBF1, ZFH4がともにATPaseであること、さらにRNA helicase superfamilyに存在するDEAD, DEAH, SAT box様モチーフを有する事実とあわせ、これらが転写因子以外にhelicaseとしての活性を有する可能性を示す。これは他のmultipel zinc finger-homeodomain protein familyのメンバーには見いだせない事であり、ATBF1, ZFH4という非常に類似した2つの蛋白がfamilyの中でもユニークな存在であることを示している。今後、その作用機序の解明が重要になると考える。また現在ATBF1, ZFH4の抗体を作製し、特に中枢神経系における発現の検討を行うことにより、違った角度から遺伝子発現調節機構の解明に取り組み始めている。
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