研究概要 |
1.Multiple homeodomain-zinc finger蛋白であるATBF1はDNA/RNA依存性のATPase活性を持つ(Biochimica et Biophysica Acta)。我々はATBF1にATPase活性が存在するか否かを検索した。ATPase A-motif, homeodomain IV、zinc finger21を含む263アミノ酸部分を含むGST融合蛋白(AHZ)を大腸菌に発現させ、ATPase活性を検索した。AHZがATPを加水分解すること、DNA, RNAいずれとも結合能を示すことを見出した。ATBF1のATPase活性は、DNA/RNA依存性であり、活性を示す際にhomeodomain, zinc finger両者の存在が必要であるという点がユニークである。 2.マウスのZFH-4は4個のhomeodomamと22個のzmcfingeを持つ(Biochem.BiQphys.Res.Commun.)。我々は12kbの長さで3550アミノ酸を持つ蛋白をエンコードするマウスzfh-4cDNAの全塩基配列を決定した。それは4個のhomeodomainと22個のzinc finger,2個のpseudo zinc fingerモチーフを含んでいた。マウスのZFH-4は、マウスのATBF1と51%の類似性を示した。RT-PCR検索でadultマウス組織で、zfh-4転写物は脳、心臓、肺、筋肉に認められた。8fh-4転写物が認められる部位のマウスの組織で、ATBF1転写物はPCRであまり増幅されなかった。これはzfh-4 mRNAの発現がATBF1 mRNAの発現より多いことを示唆していた。 3.Alpha-fetoprotein(AFP)産生胃癌は転写因子ATBF1が欠如する(Oncogene)。我々はAFP産生胃癌を用い、AFP産生促進因子であるhepatocyte nuclear factor 1(HNF1)とAFP産生抑制因子であるATBF1におけるAFP遺伝子制御を検索した。RNase protection分析で胃癌におけるAFP産生は直接HNF1発現とは関与しないが、ATBF1発現とAFP産生は直接関与していることが解った。CAT分析でAFP遺伝子発現をATBF1が直接抑制していることも明らかとなった。臨床症例を使用した免疫組織化学的検索によりAFP産生胃癌はATBF1免疫染色性が欠落することが解った。我々のデータはATBF1の欠如が胃癌のAFP遺伝子発現の原因であり、AFP産生胃癌の際だった性質であること、またこの癌腫の高悪性度な性格に重要であることが想定された。
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